あるひのこと。

「り こんした」

 

そうやって連絡が来た。

 

「?!」

 

と、わたしは返した。

 

「うん、まぁ」

 

と続けて来る。

 

そして

「ひとまず、あいたい」

 

彼から、そう言った。

 

会うのは新宿。

駅で待ち合わせて、2人で珈琲屋さんに入る。

 

薄暗くて、どこか落ち着く場所。

これから話すことなんて、ノイズ程度にしか思われないような。

そんな、ベテランな珈琲屋。

 

会ってから珈琲屋さんに着くまで

その話はしなかった。

どんな顔をして聞いてあげたら良いのかわからず、

わたしはひたすらドキドキしていた。

 

着いて、座って

わたしも彼も、同じ珈琲を頼む。

 

一呼吸置いて、彼が話を始めた。

 

「そういう、ことなんですよ」

 

妙にへらっと笑う彼の顔を見て

 

ああ、この人は傷付いている。

でも、この人は自分の心に従ったんだ。

本当の意味で、自分を信じたんだ。

 

そう、直感的に気付いた。

 

「そっか。」

「よく、がんばったね」

「よく、自分の心に素直になれたね」

 

普段ならいくらでも言葉が出て来るのに

この時ばかりは、これしか言えなかった。

 

彼はひたすらに

「そだろ」

「おれ、がんばっただろ」と、

傷を背負ってでも自分を貫けた自分に

心からの労いをかけていた。

 

わたしはそれを見て、

ああ、心に素直に従ったこの人を

どんなことがあっても

もう、1人にはしない。

 

そう、覚悟した。

 

 

 

少しの間があった後

彼は口を開いた。

 

「これで、僕はバツがついたわけだけれど」

「慰 謝料とか、そういうのでまだ時間かかるけれど」

「お金は、ないけれど」

「キミを幸せにしてもいいかな。」

「たくさん待たせてごめん」

「たくさん傷つけてごめん」

「その分、僕にキミを幸せにさせてください。」

 

少し照れ臭そうに

でも、真っ直ぐにわたしを見つめて

彼は、そう伝えてくれました。

 

わたしのこたえは。

「お金なんてなんとかなるよ」

「たくさん待ったよ」

「たくさん傷付いたよ」

「すごくたくさん寂しかったよ」

「でも、わたしもあなたといることで幸せになれるから」

「どうぞ、よろしくお願いします。」

 

涙を流しながらそっと近づいたわたしを

彼は心からの安堵の表情をしながら

 

グッと、近付けた。

 

「もう、不安にさせない」

「もう、1人でなんて泣かせない」

 

そう言って頭を撫で

そのあとわたしを抱きしめた。

 

すべて、あのときからはじまった。

 

わたしが一つずつ自分の怖さと向き合って

伝えた。

そしたら彼も自分の怖さと向き合うようになった。

弱さを見せられる人。

何があっても、そこにいてくれる人。

 

これからは、その安心感をだいじにだいじに。

 

2人で過ごしていく。